小豆島に行ってきた

遅めのお盆休み。夏休みといえばいいのか。
いただいた連休のうちの一日は小豆島へ遠足してきました。
(久しぶりにパソコン立ち上げたので調子に乗って長文です。要約すると、1.船の冷房が辛かった。2.小豆島たのしかった。この二点だけですんで。)

という感じでFBに以下の日記をアップしてみました。これ、まだごっそりひとつのエピソードを抜いていて、それをどこかに隠して埋め込もうと考えてるものの、写真のコメントスペースだとスクロールしにくくて読みにくいし、やっぱり編集履歴に隠すのが常道かなあ。アオリイカと青い蜂の思い出。

神戸から小豆島へはジャンボフェリー一本で行けます。神戸側のフェリー乗り場は税関を少し南に歩いたところにあって、そこから小豆島の南東にある坂手港に着きます。運賃は人間だけなら往復で4000円弱(※深夜便は別途300円)、お手ごろで快適な船旅です。夏場の利用には冷房対策として羽織るものかコンパクトなブランケットがあれば安心かもしれません。出航から着岸の2,30分前までは売店とおうどんを販売するカウンターが開いているので、腹ペコで乗船しても大丈夫。冷房で冷えたからだを温められるし、旧名加ト吉、現テーブルマークのおうどんだから普通にうまいです。船内のデザインがことごとくおうどんなのでサブリミナルも否めません。サブリミナルといえばジャンボフェリーのテーマ曲が印象的なのでお子さまと乗船の際はのちのち延々歌われてしまうかもしれません。たぶん油断すると大人も口ずさみます。(https://www.youtube.com/watch?v=8XlMrT3KwvY
神戸から深夜1時発の船に乗ると、冷房の寒さをこらえて朝の7時、小豆島がみえてきます。(※深夜便だけは高松経由なのでこの時間ですが、それ以外の昼便・夜便は所要時間3,4時間程度。)この高松経由の深夜便は5時ごろの高松着前に船内放送が流れるのでたぶんみんなそれで起きます。歯磨きする時間も充分あります。(…あ、今気がついた。経由地がある分、この便に乗ると一回多くテーマ曲を聴いてるんだ。往復で5回。そりゃ歌うわな。)
昨年2013年は瀬戸内国際芸術祭というイベントが開催されていて、小豆島もその会場として各地でいろんなアート作品が展示されていました。私が行ったゴールデンウィーク明けは(あ、去年も小豆島に行ったんすよ)ほんらい芸術祭全体では会期の春季と秋季のはざまだったんですが、小豆島はそのまま展示を継続して各会場にスタッフも常駐という形をとってくれていました。ゴールデンウィーク中はそれはそれはたくさんのお客さんが来ていたそうで、来客のピークを超えてほっとした雰囲気の会場ではゆるめの雑談も許されるノリで、楽しかったです。「小豆島、いいとこスよねー。」「そういってね移住してくる人もいるんだけど、あなたくらいの歳の女の子とか。」「あー。」「仕事ないから大変よ。」「っスよねー。」
小豆島を薄っすら岡山と思っていたくらいの、もちろん瀬戸芸があるとかないとか何も知らず、全くの情報手ぶらで行ったにもかかわらず、出会う人出会う人みんなが親切で、ものすごく満喫した去年の思い出を経ての再訪です。
坂手港に着いて、さっそく目に入るのがヤノベケンジのミラーボールみたいなアレ。感じたのは、この土地との「再会」。フェリー乗り場で手にしたリーフレットで「観光から関係へ」という、昨年のイベントでできた縁を繋げていこうという島の試みを読んでいたところで、なるほど、と。各地の展示を撤収するどころかいろんなプロジェクトとして膨らませているらしいです。行きたければ去年の展示もまた巡れるなあ、なんて考えてみました。帰りのフェリーの時間以外はまあノープランですけどね。
そういえば去年、ひとつの会場で知ったんですが、小豆島も八十八ヶ所の霊場があって、お遍路ができるんですよ。軽トラのおじちゃんがわざわざ車を止めて「瀬戸芸か。あっちにあるぞ。」って、ぼーっと歩いてるだけの私に教えてくれたのも、お遍路さんをもてなすやさしさが受け継がれているからかもしれませんね。さておき、せっかくなので前に行ったことのない方へ向かってみようと、岬の灯台を目指すことにしました。海の水が透明で、立派な蟹がいて、高いところで鳶が鳴いていて、遠く近くに島を眺めるこの景色。なんて気持ちがいいんだろう、それにしてもこの道は犬の糞が多いな、と浜沿いの道を進んでいたのですがまだまだ道程も半ばというところでスズメバチに威嚇されまくって「ごめんごめんごめん」と糞だらけの道を引き返しました。次はスズメバチのいない季節に灯台へ行こうと心に誓いました。や、誓うってほどじゃないけどなんか悔しいでしょ。

けっきょくお昼頃に島の南西部・土庄に着いて、こうなるとフェリーの出航時間から逆算して自ずとコースもリミットも決まってくるわけですが…。とりあえず地元の人に教えてもらったお店でごはんにしようと向かっていたら、たてすの陰に水槽がみえたんですよ。門の中の人と目が合ったから会釈して、「これはらんちゅうですか?」と声をかけたのは私の方でした。「おお、らんちゅう知ってるか?」「ていうかこんな立派ならんちゅう見たの初めてです。それは、お昼ごはん?」立派ならんちゅうに育てるには、お相撲さんをつくるのに似ていて、たくさん食べさせてたくさん運動させることが必要で、人間のお昼どきの時点で3食目のおやつなんだそうです。ちぎった海苔をパクつくのがかわいい。「こっちの水槽は今年の春産まれたの。」春に産まれる卵は15000個、そこから何段階にも選りすぐって育て上げていきます。というのも、らんちゅうは長い長い金魚の歴史の中ではまだ新しい品種だから遺伝子的に不安定な部分があって、らんちゅうとしての美しさをもつものが生まれてくるとは限らないからだそうです。「水がきれいだから元気なんですね。」「いや、逆。魚には苦しいの。」替えたての水のストレスフルな環境が魚の運動を促すので、適度に繰り返すことでからだを締めて、美しいバランスのフォルムへと育てます。らんちゅうの愛好は、単純にいきものをかわいがるというよりは、作品を磨き上げるような世界なんですね。背びれのない、丸いからだ。ちょうちょのように広がった尾びれ。少し不自由な美しさを愛する話を、1時間ほど聞いていました。「ごめんな。今日はじめて他人としゃべったからついしゃべりすぎちゃった。」って。いや全然おもしろかったっす。こんなこともなければ興味も持たないであろう世界の話を聞けるのは幸運だと思います。まじで。この1時間で、がっつりその後の予定は変えたけど。予定を変えた結果、炎天下の死の行軍も少々。それもまた一興ですよね。

帰りのフェリーも寒かったです。

 

で、本文には続きというか、ごっそり端折った時間がありまして。こちらへ隠し日記。という形でFBでは写真に埋め込んでます。

スズメバチに追われて浜を戻っていたら釣りをしている人がいて、何が釣れるのかなってぼーっと見ていました。
「さっきはこの辺に小魚の群れがバシャバシャっと走ってたんですがね…。」ひゅんっと遠くに投げながら「今はハマチの、ハマチになる前の魚が岸に近づいていてアジの群れとかが、こうバシャバシャーっと追っかけられて。」「追っかけてる方を狙ってるんですか。」かからない釣竿を仕切りなおして、またひゅんと投げて「でも、ちょっと出足が遅かったみたいです。もう沖の方へ行ってしまったみたいで。」近くに見える小島の沿岸に渡船があるのを「もう、あの辺ですね。」と見遣ります。
灯台に向かおうとしていたときに他県ナンバーの車を止めるところを見ていたので「ここの方?○○?」車を指差して「?」を向けたらけっこうプライベートなプロフィールを話してくれて「今、喋りながら何回かトライしたけどダメでしたね。イカだったらすぐ釣れるんで、イカ釣りましょうか。」
ハマチとイカでは仕掛けが違うそうで、エビの形の仕掛けをつけると軽くひゅんっと海に投げて、すぐに「ほら、イカが近づいてきてるでしょう。」海の中を見るとエビの疑似餌に向かって2匹、ふよふよーっと寄ってきてるのが見えます。「ぅわ。ほんまや!かわいい!おお、めっちゃかわいい!つーか、めちゃめちゃ水が透明ですよね!ちゃんと見えるし、すごい!あ、今、騒いだらあかんやつ?」「大丈夫ですよ。」と言ってるうちに何度か逃げられつつ、「今はイカも幼いんで岸の近くにいるんだけど、これが成長するうちに沖の方へ行ってしまって、こういう釣り方はできなくなるんです。産卵でまたこっちへ戻ってくるときは30センチくらいになって。」「え、こわい。」「その頃にはこういう疑似餌じゃ騙せなくなってますね。」「今はまだ素直にかかってくれるんだ。」
なんてイカレクチャーを受けていたら、ひょいっとかかりました。かかりました!墨吐く!小さいのにめっちゃ墨吐く。イカの体表の液晶ビューティー、生きているイカは姿に意思がありますね。「醤油を持ってきてないから、海の水で洗うのでよかったら今食べますか?海の水とかいやじゃない?」「全然いやじゃないっていうかそうやって食べたことないけど食べたみたいです。」手際よくちょきちょきっと切って外して剥いて切って「どうぞ。」って。「いただきます。」旨い!甘い!歯ごたえ!あとゲソ、ゲソくっつく!ナニコレー!小さいのに味覚の満足感パネぇ。
島の人と旅行者として、警戒心をここまでロウにしていいのか判らないけど、たぶんお互いそういう性格だったようで、そのまま車に乗せてってもらって昼前までいろいろ連れてっていただきました。いろいろの中に私のリクエストの廃墟も含むので、なんつーか、渡る世間に鬼はなしって感じ?人の親切が骨身に染みます。また会えたらこってりお礼を言いたいです。なんかねえ、ほんまにゆるくてええ人やったもんで、あの時間を思い返すとしばらく機嫌がええんすわ。